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パーパス・バウンド・マネー

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2026年10月7日

パーパス・バウンド・マネーの記事イメージ

ブロックチェーンベースの通貨の主要な特徴の一つはプログラマビリティであり、これによって条件付きの決済が可能になります。お金は単なる価値の移転ではなく、何かを起こしてほしいという意図のシグナル、あるいは何かが実行されたというシグナルであることが少なくありません。言い換えれば、メッセージを伴う価値の移転です。またお金には想定された受け手が存在します。政府が裏付ける資金は犯罪者やマネーロンダリングを行う者の手に渡ることを望みませんし、補助金は特定の層だけを対象としたい場合があります。

本記事では、条件付き決済のフレームワークとしてパーパス・バウンド・マネーを取り上げます。パーパス・バウンド・ペイメントは、場合によっては、バウチャー・ポイント・給付金型の価値保存手段にとって、より実用的な実装となりえます。

まず、条件付き決済の代表的な実装である 1) プログラマブル・マネー と 2) プログラマブル・ペイメント を説明したうえで、パーパス・バウンド・マネーと、給付金・ギフトバウチャー・ポイント制度におけるそのユースケースを見ていきます。

プログラマブル・マネー

プログラマブル・マネーとは、条件がお金そのものに組み込まれている形態です。一例がMIZUHIKI上のMUSDコントラクトで、送金元と送金先のアドレスが日本における法的なKYCを表すソウルバウンドトークンを保有していることを要求します。ただしこのモデルには、「KYC済み」のウォレットを持たない相手には価値保存手段を移転できないという問題があります。これは「貨幣の単一性」の原則、すなわち現代の通貨が価値を保つうえで不可欠な交換可能性・携帯性・代替可能性に反します。

条件がトークン自体に組み込まれたプログラマブル・マネーの図

プログラマブル・ペイメント

条件付きの価値保存手段のもう一つの類型が、プログラマブル・ペイメントです。プログラマブル・ペイメントとは、一定の条件が満たされたときにロックが解除され、または移転される資産(お金を含む)を指します。資産自体に条件が付されているわけではないため、ロジックは時点 t における保有者のスマートコントラクトの中に存在します。この仕組みは、保有者が特定の行為や想定受取人に対して明確な支払指示を持つ場合に理想的です。ただしお金自体に条件ロジックが埋め込まれていないため、移転が完了した時点で受取人はその資産を無条件に自由に利用できます。

プログラマブル・ペイメントに最適なユースケースはエスクローやトレーディングです。エスクローでは、物理的な商品の引き渡しや法的合意における一定のマイルストーンの達成など、条件が満たされた時点で保有者が資金を解放したいと考えます。

トレーディングでは、株価が一定の水準に達した時点で支払いが実行されることがあります。この種のロジックは何十年も前から存在しますが、オンチェーンのプログラマブル・ペイメントとして実装したほうが計算効率は高くなります(その証左が、先ごろ取引高でNASDAQを上回ったオンチェーン取引プロトコルHyperliquidの成功です。Hyperliquidは11名の小規模なチームで運営され、2020年に設立されました)。

条件ロジックが保有者のスマートコントラクト側に存在するプログラマブル・ペイメントの図

パーパス・バウンド・マネー

パーパス・バウンド・マネーは、一対多の分配モデルを持つ条件付き決済に適しています。その機能を最も分かりやすく説明するには、最適なユースケースである給付金から始めるのがよいでしょう。

日本では給付金は比較的一般的です。地域の事業者を支援するために自治体から支給されるものもあれば、高齢者への給付を行うものもあります。

近年、想定を上回るインフレを受けて、東京では自治体ごとに1万円の給付が行われてきました。こうしたバウチャー型の給付を受け取るために、住民は新しいアプリをダウンロードしてKYCを受ける必要があり、加盟店側も申請のうえ受け取り用のインフラを導入する必要がありました。

パーパス・バウンド・マネーを用いれば、KYC済みの受給者(MIZUHIKI IDインフラ経由)に対して、新たに発行されたラップドトークン、すなわち原資産であるERC 20を一定地域内の地元事業者でのみ償還可能とする条件ロジックを備えたトークンを発行できます。受け取る側の地元事業者は、PBMトークンに触れる必要も償還する必要もありません。利用制限が厳しく、価値保存手段としては魅力に乏しいトークンだからです。代わりに償還時には、事業者はPBM発行体のスマートコントラクトから通常のステーブルコインを受け取り、使用済みのPBMは自動的にバーンされます。

発行から償還・バーンまでを示したパーパス・バウンド・マネーによる給付金の図

パーパス・バウンド・マネーのその他のユースケース

ギフトバウチャー

次のような事前定義されたルールを持つバウチャーを考えてみます。

  1. バウチャーはKYC済みの主体のみが保有・移転でき、未検証のウォレットには決して渡らない。
  2. バウチャーは、バウチャープログラムに参加する承認済みの主体(登録ブローカーなど)のみが償還できる。

従来のギフトカードはクローズドループであり、不正利用やグレーマーケットの存在から移転は安全ではありません。PBMではルールがバウチャーとともに移動し、発行体はPBMスマートコントラクトの中にステーブルコインとして資金を保持します。

図に示すユースケースは投資ギフトバウチャーの事例です。これは不正とAMLの問題から、現在のところ一般的には見られません。証券ブローカーは強いAML義務を負っており、出所の分からないバウチャーを償還すれば法的にグレーな領域に置かれることになるためです。

しかし、日本の資産所得倍増プラン(現金・預金中心の貯蓄から、より能動的な投資への移行を促す政府の計画)のもとでは、税制優遇のある個人向け投資チャネルにアクセスするために、友人や家族へ投資バウチャーを贈りやすくする実質的な動機があります。PBMは、償還者が認可を受けた免許事業者であることを求める埋め込みルールを持つバウチャーとして機能し、同時にバウチャーの移転が追跡可能であること(AML義務の充足)と、KYC済みの個人のみが保有する状態を担保できます。

パーパス・バウンド・マネーとして発行され、免許を持つブローカーが償還する投資ギフトバウチャーの図

航空系クレジットカードポイント

クレジットカードのポイントは、日本と米国でとりわけ大きな存在です。これらの地域では通常、カード利用者は総利用額の0.5%から2%程度をポイントという形で還元として期待できます。カード会社は、特定のカテゴリで使えるポイントを貯めたい利用者向けに、さまざまな種類のカードやプログラムを用意しています。人気のカテゴリの一つが航空系ポイントで、利用者は航空券の購入や座席のアップグレードにのみ使えるポイントを貯めることを選びます。

提携航空会社は、ロイヤルティのチャネルを作り、「マイル」の価値をカード発行会社へ前払いで販売することで利益を得ます。これは繰延収益の一形態です。航空会社はまた、失効(ブレッケージ)と価値の目減りからも利益を得ます。すなわち、利用者がポイントをうまく使えずに未償還・未移転のまま残る場合や、航空会社が交換に必要な水準を引き上げることでポイントの価値が下がる場合などです。

しかし航空会社は、この形でのポイントの価値の目減りについて、米国の規制当局と顧客の双方から批判を浴びてきました。

2024年9月、米国運輸省はロイヤルティポイントの価値毀損に関する調査を開始しました。対象となったのは 1) 獲得済み特典の価値毀損、2) 不透明で変動する価格設定、3) 追加手数料、4) 航空会社の統合による競争と選択肢の減少 の4点です。この調査は法的に義務付けられた改革にはほとんど至りませんでしたが、航空会社とポイント・ロイヤルティ制度の劣化に対する顧客の懸念を裏付けるものとなりました。これは航空会社への顧客ロイヤルティと信頼に、より深い影響を及ぼします。

重要なのは、パーパス・バウンド・マネーによって、航空会社はポイントの前売りによる繰延収益を生み出しつつ、ポイント制度の失効と価値毀損を排除できるという点です。その代わりポイント制度は、より信頼性の高い通貨的な商品として機能し、カード発行会社からより高い価格を引き出せる可能性があります。ポイント制度のビジネスモデルは変化しますが、それが必ずしも航空会社の利益減少を意味するわけではなく、一方でクレジットカード利用者と航空会社の顧客に、より優れた体験をほぼ確実に保証します。

移転可能性を保証し、ポイントの価値毀損の余地をより限定するポイントを、パーパス・バウンド・マネーのような仕組みを通じて提供する航空会社は、そうした仕組みを採用しない競合よりも優れたロイヤルティ基盤を獲得する可能性が高いでしょう。

パーパス・バウンド・マネーとして発行され、移転可能性が保たれる航空ロイヤルティポイントの図

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